AIの中身をのぞくURACHIKA 34
勉強会㉞ 2026年9月2日(水)21:30〜 講師: 園長 約90分(講義60分+Q&A30分 目安)

AIは1+1を計算していない

中身を知ると、選び方が変わる

33回の勉強会で道具の使い方はたくさん話してきた。今夜は道具の「中身」の話。AIが次の言葉を確率で選んでいる、と知るだけで、ハーネスも、モデル選びも、全部つながる。

読み終わるとできること

  1. 「AIは次の言葉を確率で選んでいる」を自分の言葉で説明できる
  2. モデルの4つの性質と「ほめ上手」を知り、自分の困りごとと結びつけられる
  3. CLAUDE.md・スキル・Hooks・サブエージェント・第三者評価を「困りごとへの対策」として位置づけ直せる
  4. モデル・エフォート・ツールを「理由をもって」選べる
  5. 今夜やる宿題3つを持ち帰る
AIの頭の中をのぞきこむ柴犬と猫のイラスト
今夜のテーマは「AIの頭の中をのぞく」。ツールの話ではなく、その中身の話です。
POINTS3要点

先に結論から

要点まとめ

今夜の90分は、この3行に全部つながっています。迷ったらここに戻ってください。

1

AIは「次の言葉を確率で選ぶ」機械

同じ質問でも毎回少し違う答えが返る(非決定論)。これは故障ではなく、そういう仕組み。

2

だから困りごとが生まれる。ハーネスはその対策

知識の締切・机の広さ・注意力有限・長いほど落ちる・ほめ上手。全部モデルの性質から出てくる困りごとで、ハーネスはそれへの対策。

3

中身を知ると、選び方が「勘」から「理由」になる

モデル(エンジン)・エフォート(アクセル)・ツール(電卓)。どれを選ぶかに理由がつく。

MAP7章立て

今夜の進み方

今夜の地図

前半で「AIの性質」を体感し、後半で「だからハーネス」「だから選び方」に着地します。時間はすべて目安です。

  1. 第0章次の言葉当てゲームいま皆さんがやったことが、AIがやっていること5分
  2. 第1章電卓とAIは何が違うのか決定論と非決定論・1+1・ハルシネーションと知識の締切12分
  3. 第2章モデルの4つの性質知識の締切・机の広さ・注意力・長いほど落ちる15分
  4. 第3章AIはほめ上手迎合性バイアスと第三者評価8分
  5. 第4章ハーネス=車、モデル=エンジンCLAUDE.md・スキル・Hooks・サブエージェント12分
  6. 第5章だから選び方モデル・エフォート・高速モード・ツール・使用量パネル15分
  7. 第6章確率で動くAIとの3つの約束今夜の持ち帰り6分
  8. Q&A質問・雑談・宿題の確認チャットでも声でも30分
CHAPTER0第0章

目安 5分園長のnoteより

次の言葉当てゲーム

説明の前に、まず皆さんにやってもらいます。下の文の「次の言葉」を、Zoomのチャットに書いてください。

昔々、あるところに

次に来る言葉は? チャットに書いたら、ボタンを押してください。

数字はイメージです(園長のnoteより)。実測値ではありません。ほぼ全員が「おじいさん」と書くはず。それがこのゲームの答えです。

いま皆さんがやったことが、AIがやっていることの全部です。 文脈を見て、いちばん来そうな言葉を選ぶ。AIはこれを何百回・何千回と繰り返して文章にしている。

超高速の「次の言葉当てゲーム」

AIは一言ずつ「次に来そうな言葉」を選び、それをつなげて文章にしています。正確には単語ではなく「トークン」という単位ですが、今日は初心者向けに「言葉」と言い換えます。

なぜ次の言葉がわかるのか

膨大なテキストからパターンを学習しているから。賢さの正体は「膨大なパターンの記憶」です。だから「それっぽい文章」を作るのがとても上手い。

図01「昔々、あるところに」の次の言葉と確率
「昔々、あるところに」の次に来る言葉の候補を、確率のイメージつきで並べた図解

図: 次の言葉当てゲーム。候補の中からいちばん来そうな言葉を選ぶ。数字はイメージ(園長のnoteより)。

CHAPTER1第1章

目安 12分園長のnoteより

電卓とAIは何が違うのか
— 決定論と非決定論

AI(LLM)を使った仕組みを考えるときに最初に考えるべきなのが、この「決定論か、非決定論か」です。電卓と比べると、いちばんよくわかります。

決定論

電卓・プログラム

入力Aなら、必ず出力B。何回押しても同じ。

  • 例: 「配列から重複を除く関数を書いて」は、誰が何回書かせても同じ動きのコードになる
  • 同じ入力に同じ出力。だから「テストが通れば安心」が成り立つ
非決定論

AI(LLM)

次の言葉を確率で選ぶ。だから同じ質問でも、毎回少し違う。

  • 実演: 「AIエージェントとは何か、20文字以内で定義して」を3回投げると、内容は近いのに文面が毎回違う
  • 電卓は同じ入力に必ず同じ出力。AIは毎回変わり得る
図02決定論(電卓)と非決定論(AI)
同じ入力に必ず同じ出力を返す電卓と、毎回少し違う答えを返すAIを対比した図解

図: 決定論と非決定論。電卓は毎回同じ、AIは毎回少し違う。

A実演① 同じ質問を3回(園長がライブ)

使い方: 新規チャットを開いて、これを貼る。答えが出たら、また新規チャットで同じものを貼る。3回。

AIエージェントとは何か、20文字以内で定義してください。

ブレは悪ではない

ぶれる仕組みだからこそ、出力を確かめる「検証の仕組み」が必要になります。一方で、そのブレは探索の幅にもなる。案出しや、いくつも作って良いものを選ぶ(ベストオブN)はこの性質の活かし方です。

1+1 の話: AIの中に電卓はない

AIが「1+1=」の続きに「2」と書けるのは、計算しているからではなく、「1+1=」の次に「2」が来る確率が高いから。中に電卓が入っているわけではありません。賢さの正体は膨大なパターンの記憶です(園長のnoteより)。

ただし「だから計算は無理」ではありません。今のモデルは思考トークンやコード実行で計算できます。ここは第5章「電卓を持たせる」につながる伏線です。

図03AIの中に電卓はない
「1+1=」の次に「2」が来る確率が高いだけで、AIの中に電卓はないことを示した図解

図: 「1+1=」の次に「2」が来る確率が高い。計算機ではなく、パターンの記憶(園長のnoteより)。

ハルシネーション(それっぽい嘘)

AIは「次に来そうな言葉」を予測しているだけで、事実かどうかを判断していません。だから、悪気なく、自信満々に、それっぽい嘘を言うことがある。例: 実在しない論文をもっともらしく紹介する。これは故障ではなく仕様です(園長のnoteより)。

もうひとつの理由: 知識に締切がある

AIが間違える理由は2つあります。1つが今のハルシネーション。もう1つがナレッジカットオフ、つまり学習した知識に締切の日付があることです。締切より後に起きたことは、そもそも知りません。

やっかいなのは、知らないと言わずに、それっぽく答えてしまうことがある点です。「知らない」も「間違い」も、外から見ると同じ顔をしています。第2章で性質①として詳しく扱います。

だから対策は同じ1つ

ハルシネーションも知識の締切も、対策は同じです。事実を外から渡すこと。検索させる、資料を貼る、ツールで調べさせる。

新しいモデルほど「自分が知らないことを知っている」のが上手くなっていますが、頼り切らない。大事な数字・人名・URLは、AIの記憶ではなく外の情報源で確かめます。

Google検索=探す / AI=作る

事実を調べるなら検索、文章を作るならAI。役割が違います。

得意: 文章作成案出し言い換え・要約翻訳プログラミング解説

苦手なこと(AIの記憶に頼らない)

最新情報・正確な数値・実在確認は、AIの記憶ではなく、外の情報源で確かめる。

苦手: 最新情報正確な数値実在確認
園長の補足: 2月のnoteからのアップデート

2月のnoteでは「思考していない」と書いた。仕組みとしては今も「次の言葉を確率で選んでいる」が正しい。ただ2026年のモデルは「考える時間(思考トークン)」を持ち、道具(コード実行・検索)を使えるようになった。だから今日の結論は「AIは思考していない」ではなく、「AIは確率で動く。だから補助輪をつける」

仕組み(検証できること)と解釈(論争があること)は分けて話します。「確率的オウム(Stochastic Parrots)」は2021年にAI倫理の研究者が使った表現で、今日は用語として紹介するだけです。

CHAPTER2第2章

目安 15分

モデルの4つの性質

「確率で次の言葉を選ぶ機械」には、決まった性質があります。比喩とセットで4つ押さえます。困りごとの正体はだいたいこの4つです。

1

知識に締切がある

たとえ: 卒業した日で止まった教科書

ナレッジカットオフ。それ以降の情報は、検索・RAG・ツールで外から補う。新しいモデルほど「自分が知らないことを知っている」(メタ認知)のが上手い。

2

机の広さに限りがある

たとえ: 机の広さ・体力ゲージ

コンテキストウィンドウ=短期記憶。机に載ったものだけ見える。載らないものは存在しないのと同じ。

これは「入らない」問題容量の話。上限を超えた分は机の外に落ちて、最初から見えない。ゼロか100かの境界。対策: 何を入れるか選ぶ(要約してから渡す・必要な資料だけ渡す)

3

注意力は有限

たとえ: 1000個のルールを渡された新人

CLAUDE.md に1000個のルールを書いても、途中で守れない箇所が出る。人間と同じ。

4

長いほど落ちる

たとえ: 会議の3時間目

コンテキストロット。入力が長いほど性能が落ちる。加えて、真ん中にある情報は忘れやすい(ロストインザミドル)。

これは「入っているのに使えない」問題品質の話。机の内側で起きる、だんだん悪くなる坂道。対策: 埋まる前に切る(7割で区切る・/clear・タスクを分ける)

図04モデルの4つの性質
知識の締切・机の広さ・注意力有限・長いほど落ちる、というモデルの4つの性質を並べた図解

図: モデルの4つの性質。困りごとの正体はだいたいこの4つ。

机は広ければ良い、ではない

コンテキストウィンドウが大きいモデルなら安心、とはなりません。机に載せた中身を思い出せるか制約を守り続けられるかで差が出ます。

「長いほど落ちる」の目安と対策

目安として、1Mトークンの7割あたりから劣化が始まる。対策は4つ。

  • 使用率5割や3割で区切る(区切る判断もハーネスの一部)
  • /clear で頭を空にする
  • タスクを机に収まる範囲に切る。収まらなければマルチエージェント
  • 関心の分離: UI生成とバックエンド生成と素材生成を1体に混ぜない
注意力有限への対策

指示は短く、文脈に沿って必要なときだけ渡す。「たくさん書けば守ってくれる」は、人間の新人に1000個のルールを渡すのと同じで、途中で抜けます。

図05コンテキストウィンドウ=机の広さ
机に載ったものだけが見え、載らないものは存在しないのと同じ、というコンテキストウィンドウの比喩の図解

図: 机に載ったものだけ見える。載らないものは存在しないのと同じ。

園長の補足: ウラチカの運用でも同じ

1タスク終わるごとに /clear。大量のファイル読みやログ調査はサブエージェントに任せて、本体の机を汚さない。ChatGPT や Claude.ai なら「話題が変わったら新しいチャットを開く」が同じ発想です。

CHAPTER3第3章

目安 8分

AIはほめ上手
— 迎合性バイアス

4つの性質に加えて、もうひとつ知っておきたいのが迎合性。同じチャットの中で「採点して → 直して → もう一度採点して」を繰り返すと、何が起きるか。

実演: 点数はどこまで上がる?

同じチャットで「このツイート何点?」→ 改善 → 再採点を繰り返すと、点数はどんどん上がる。ところが新しいチャット(メモリオフ)で最終版を採点させると、ほとんど上がっていなかった。

60点最初 80点改善1回目 90点改善2回目 100点同じチャット 58点新しいチャットで再採点

原因: 会話の流れに合わせて「喜ばせる」方向へ

会話の流れに合わせて「相手を喜ばせる」方向に確率が寄る。これも「次の言葉を確率で選んでいる」ことの帰結です。悪意も故障もありません。

対策: 評価はフレッシュな第三者に

評価はコンテキストがフレッシュな第三者(別チャット・別エージェント)に頼む。作った本人に「どう?」と聞かないのと同じです。

図06迎合性: 同じチャットと新しいチャット
同じチャットでは60点から100点まで上がった採点が、新しいチャットでは58点になった迎合性の実演を示す図解

図: 迎合性の実演。同じチャットでは100点、新しいチャットでは58点。

園長の運用: フレッシュコンテキスト原則

実装したのと同じ文脈で自己レビューしない。検証は別のサブエージェントか、新規チャットに任せる。7/14 の勉強会㉑(ハーネス回)で話した「フレッシュコンテキスト原則」の根っこは、この迎合性です。

B実演② 迎合性テスト

使い方: 手順1を貼る → 出た点数をメモ → 手順2を2回くり返す → 最後の文章をコピーして、新規チャットで手順3を貼る。山括弧の部分は自分の文章に置き換えてください。

手順1(採点):
次の文章を100点満点で採点して、点数と理由を3つ教えてください。

<採点してほしい文章>

手順2(改善・2回くり返す):
指摘をもとに改善して、改善後の文章をもう一度100点満点で採点してください。

手順3(新規チャットで最終版を採点):
次の文章を100点満点で採点して、点数と理由を3つ教えてください。

<手順2で最後に出た改善後の文章>
CHAPTER4第4章

目安 12分

ハーネス=車、モデル=エンジン

ここまでの性質(非決定論・締切・机・注意力・長さ・迎合)は、モデルそのものの性質です。ハーネスは、その性質から生じる困りごとへの対策。ここから整理します。

AI AGENT

AIエージェント

実際に仕事をしてくれる「走る車」

MODEL

モデル = エンジン

Fable・Opus・Sonnet・GPT系。次の言葉を確率で選ぶ本体

HARNESS

ハーネス = 車

Claude Code・Claude Desktop・Codex・各アプリ。エンジンを走らせる仕組み

図07モデル=エンジン、ハーネス=車
モデルをエンジン、ハーネスを車にたとえ、両方そろってAIエージェントになることを示す図解

図: エンジン(モデル)だけでは走れない。車(ハーネス)に載せてはじめてAIエージェントになる。

ハーネスエンジニアリングの定義

モデルの性質に対して、確実により質の高い出力を得るための仕組み作り。構成要素はシステムプロンプト・ツール・ループ・権限・メモリ。概念の多くは Anthropic 発で、まだ発展・模索の途中です。

4つの道具(Claude Code の例)

Claude Code を使っていない人も大丈夫。ChatGPT のカスタム指示・メモリ・GPTs も同じ発想です。「どの困りごとへの対策か」で見てください。

CLAUDE.md→ 注意力・机の対策

いつも読まれる「守ってほしいこと」置き場。常に守ってほしいこと・設計パターン・報告フォーマットを書く。まず取り組むべき要素。

  • 今のトレンド: 細かい方法論を書きすぎない。賢いモデルは自分でより良いやり方を見つける。選択肢とツールの提示にとどめる
  • Markdown の見出しや構造化で注意を引く=「AIへの気遣い」
  • 段階的開示の入口: 詳しいドキュメントのパスへ誘導する

スキル→ 机・注意力の対策

タイトルと説明だけを頭の片隅に置き、必要なときに本文を読む(段階的開示)。机を汚さずに、必要な知識だけ引き出す仕組み。

  • 辞書型: ドメイン知識を持たせる
  • ワークフロー型: 手順やスクリプトを持たせる

Hooks→ 非決定論の対策

モデルの判断に頼らず「必ず実行される」処理。確率で動く世界に、決定論を取り戻す仕組み。「毎回必ずやってほしいこと」はお願いではなく Hooks にする。

サブエージェント→ 注意力・机の対策

関心の分離。1体に注文を詰め込むと質が落ちるので、仕事を分けて別の机で進める。注意力有限の問題を、人数で解く発想。

図08ハーネスの4つの道具
CLAUDE.md・スキル・Hooks・サブエージェントの4つの道具を、それぞれどの困りごとへの対策かとともに並べた図解

図: ハーネスの4つの道具。それぞれ、どの性質への対策かで見ると迷わない。

発展パターン

マルチモデルレビュー(例: Opus が気づけないことを Sonnet が気づく)・LLMディベート・ベストオブN。複数のモデルで探索の幅を広げる使い方です。

7/14 勉強会㉑との接続

あの回で話した「ループ・メタハーネス」は、今日の性質(非決定論・迎合性・注意力有限)への対策でした。今夜でやっと、根っこがつながります。

CHAPTER5第5章

目安 12分Anthropic 公式・園長の運用より

だから選び方
— エンジン・アクセル・高速モード・電卓

中身がわかると、選び方が「勘」から「理由」になります。選ぶのは3つ。モデル(エンジン)× エフォート(アクセル)× ツール(電卓)

1. モデル=エンジンの大きさ

Claude モデルの価格と向き
モデル入力出力机の広さ向き(園長の整理)
Claude Haiku 4.5$1$5200K速い・安い。定型の小さな作業
Claude Sonnet 5$2$101M日常のバランス型。要約・定型調査
Claude Opus 5$5$251M実装・検証・重い作業
Claude Fable 5.1$10$501M最高性能。設計・統合・審美判断

2026年6月時点の Anthropic 公式価格(1Mトークンあたり・入力/出力・米ドル)。「机の広さ」=コンテキストウィンドウ。

Haiku / Sonnet — 軽い方の2つ

Haiku 4.5 は一番小さくて速いエンジン。分類・抽出・定型の短い返事のように、答えが決まっている作業向きです。ただし机が200Kと他より狭いので、長い資料の読み込みには向きません。

Sonnet 5 は日常の主力。要約・調査・下書きなど、量をこなす仕事のバランスが良い。園長は「安い床は Sonnet」と決めていて、Haiku は実用品質が足りない場面が多いので使いません。

Opus / Fable — 重い方の2つ

Opus 5 は実装・検証・コードレビューの主力。手を動かす仕事が得意で、値段の割に働きます。後述の高速モードが使えるのは Opus だけです。

Fable 5.1 は現時点で最も賢いエンジン。設計、知識の統合、デザインの審美判断、矛盾の裁定のように「answerが1つに決まらない仕事」で差が出ます。出力はOpusの倍の値段なので、要所に投入します。

園長の使い分け: 枠が別なのを利用する

メインは Fable。実装は Opus のサブエージェントに投げる。Opus は Fable と使用枠が別なので、メインの枠を食わずに実装を回せます。探索や大量のファイル読みは軽いモデルに任せて、メインの机を汚さない。「一番賢いモデルで全部やる」より、この分担のほうが早く終わります。

2. エフォート=アクセル(考える時間)

思考トークン=AIが答える前に自分で書く下書き。エフォートはその深さの設定で、5段階。Fable 5 系は「考える時間」が常時オンで、エフォートで深さを調整します(Anthropic 公式)。API の既定は high、Claude Code の既定は xhigh(コーディング向けの設定)。

  • low軽い作業
  • mediumふつう
  • high園長の普段
  • xhigh重い設計・難デバッグ
  • max原則使わない

エフォートを上げると、何が変わるのか

変わるのは答える前の下書きの量です。上げるほど、深く考え、手順を細かく踏み、見落としが減ります。代わりに時間とトークンを使う。

下げると逆になります。道具を呼ぶ回数が減ってまとまり、前置きが短くなり、確認もあっさりになる。サブエージェントや単純作業には low が向くのはこのためです。

効くタスク、効かないタスク

エフォートは全部の仕事に効くわけではありません。コーディングと長時間の自律作業には強く効きます。一方、雑談・分類・大量処理のような仕事は low のままで品質が落ちないことが多い。

だから全体の設定を上げるのではなく、用途ごとに変える。上げる前に、実際の仕事で試して差が出るか測るのが順番です。

園長の運用: アクセルの踏み方

普段は high。重い設計・難デバッグ・長時間の自律実行だけ xhigh。max は原則使わない(コスト増の割に伸びが小さく、考えすぎる)。使用枠が厳しいときは Opus に落とす。エフォートはAPIの設定なので、AIに「頑張って考えて」とプロンプトで頼んでも変わりません。切り替えるのは人間の側です。

3. 高速モード=同じエンジンで、出力を速く

Claude Code には高速モード(/fast で切り替え)があります。ここを誤解している人が多いので、はっきり言います。

高速モードとは何か

同じ Opus のまま、文字が出てくる速さが上がる仕組みです。小さいモデルに落ちるわけではありません。賢さはそのままで、出力の速度が最大2.5倍ほどになります。

Opus 5 / 4.8 で使えるFable では使えない料金は割高

よくある誤解

「高速モード=安いモデルに切り替わって品質が落ちる」と思われがちですが、逆です。モデルは変わらず、料金はむしろ上がります。速さを買う機能だと思ってください。

研究プレビューの段階の機能で、通常のOpusとは別の利用上限を持ちます。

3つの調整つまみの関係

整理すると、いじれるつまみは3つです。モデル=エンジンの大きさ(賢さ)エフォート=アクセルの深さ(考える量)高速モード=出力の速さ。混同しやすいのは後ろの2つですが、エフォートは「どれだけ考えるか」、高速モードは「どれだけ速く喋るか」で、別のものです。待ち時間が苦痛なら高速モード、答えが浅いならエフォート、力不足ならモデル。

大きいエンジン×低いアクセル vs 小さいエンジン×高いアクセル

新しいモデルの低エフォートは、前世代の高エフォートに並ぶ、または上回ることがある(Anthropic 公式ガイダンス)。だから、まず1つのモデルでエフォートを調整し、そのあとモデルを変える

他社のAIにもある「考える時間」

ChatGPT など他社のAIにも、同じ「考える時間」の切り替えがあります。名称は製品ごとに違いますが、発想は同じ。「重い質問だけ深く考えてもらう」が基本です。

4. ツール=電卓を持たせる

計算はコード実行

AIに暗算させない。電卓(コード実行)を持たせれば、確率ではなく計算で答えが出る。

事実は検索

締切以降の情報・数値・実在確認は、記憶ではなく検索やツールで外から取る。

決まった作業はスクリプト

一括リネームのような決定的な作業はスクリプトに。LLM に決定論的システムの模倣をさせない。

C実演③ 電卓を持たせる

使い方: Claude Code、または ChatGPT / Claude のコード実行が使える環境で貼る。先に「暗算で」と頼んで、次に「コードで」と頼むと差が見える。

1回目(暗算):
次の計算を、コードを使わずに暗算で答えてください: 123456 x 789012

2回目(電卓を持たせる):
次の計算を、暗算せずにコードを実行して答えてください。実行結果もそのまま見せてください: 123456 x 789012

判断軸: 1リクエストの安さで選ばない

コストは1リクエストではなく、解決1件あたりの総コスト(トークン×時間×人の手間)で判断する。安いリクエストでも、往復や再試行が増えれば安くない(Anthropic 公式・園長の運用)。

園長のサブエージェント分担

  • 探索・大量ファイル読み = 軽いモデル
  • 要約・定型の並列作業 = Sonnet
  • 実装・検証・レビュー = Opus
  • 知識統合・審美判断・戦略の裁定 = Fable

委譲の判断軸はトークン節約ではなく「完了到達までの総時間」。

5. 使った量は、パネルで見える(/usage)

Claude Code で /usage と打つと、いま何をどれだけ使っているかが出ます。ここが今夜の話の答え合わせになります。

枠は「3つの別財布」

上限はひとつではありません。5時間ごとの枠週の全モデル枠週の Fable 枠の3つが別々に減ります。

Fable が別枠なのは大きな意味があります。Fable の枠が細くなっても Opus は動く。だから実装を Opus のサブエージェントに逃がすと、メインの枠を守れます。

なぜ長い会話ほど高いのか

ここが一番大事です。AIに記憶はありません。AIは1回の問いに答えるだけの機械で、前回の会話を覚えていません。

会話が続いて見えるのは、アプリが毎回「これまでのやりとり全部」を頭にくっつけて送り直しているから。10往復目の質問では、1往復目からの全部が一緒に飛んでいます。第2章の「机」の話が、そのまま料金になっているだけです。

キャッシュ = 前回と同じ部分は読み直さない

毎回まるごと送り直すなら、料金は青天井のはずです。それを救っているのがキャッシュ。むずかしい言葉ですが、やっていることは1つだけです。

たとえば3往復目の質問をしたとき、送っているのはこの3つです。

  1. 1往復目のやりとり
  2. 2往復目のやりとり
  3. 3往復目の質問(今回あたらしい分)

このうち1と2は、前回もまったく同じ内容で送っています。サーバーには前回それを処理した結果が残っているので、読み直しません。あたらしく読むのは3だけ。これがキャッシュです。読み直さずに済んだ分の料金は、定価の10分の1以下になります。

使用量パネルの実測例
項目意味どっちが良い
入力10.6k今回あたらしく読ませた量少ないほど安い
キャッシュ読み取り32.6M読み直さずに済んだ量多いほど得
キャッシュヒット98%送った量のうち読み直し不要だった割合高いほど良い

園長の環境の実測値。これは非常に良い状態です。98%が効いていなければ、32.6M を全部定価で読ませることになり、料金の桁が2つ変わります。

条件は「頭から順に同じ」であること

なぜ頭から順なのか。文章は前から読むからです。さっきの例で1往復目を書き換えると、そこから先は「前回と同じ」と言えなくなり、2も3も読み直しになります。だから、こうなります。

  • セッションの途中で CLAUDE.md を書き換える → 束の先頭が変わるので、そこから先が全部無効。高くなる
  • 過去の発言を編集する → 編集した場所から後ろが再処理される
  • /clear で机を空にする → 束そのものが消えるので、次から薄い束で始まる。得

まとめると、会話の頭は動かさない、長くなったら切る。この2つだけ覚えておけば十分です。

パネルが名指しする「主犯」3つ

使用量パネルには「何が使用制限を消費していますか」という欄があります。園長の環境で上位に出るのは、この3つです。

  1. サブエージェントを多用したセッション
  2. 150k を超えるコンテキストでの実行
  3. 4つ以上のセッションの並行実行

見てのとおり、今夜すでに話した性質の帰結です。1つ目は第4章の関心の分離、2つ目は第2章の机とコンテキストロット、3つ目はその掛け算。

だから対策も、すでに話した3つ

机を空にする(1タスク終わるごとに /clear)。サブエージェントは分離する価値があるときだけ使う(数を増やせば速くなるわけではない)。重いツール結果を絞る(読ませる量そのものを減らす)。使用量パネルは、この3つをサボっていないかを数字で見せてくれる鏡です。

図09エンジンの大きさ×アクセルの深さ
モデルの大きさをエンジン、エフォートをアクセル、ツールを電卓にたとえて、選び方を整理した図解

図: エンジン(モデル)× アクセル(エフォート)× 電卓(ツール)。まずアクセル、それからエンジン。

CHAPTER6第6章

目安 6分

確率で動くAIとの3つの約束

今夜の性質と対策を、明日から使える3つに絞ります。ツールが変わっても、この3つは変わりません。

1

検証は別のチャットで

迎合性と、自己レビューの盲点をつぶす。作った文脈で「どう?」と聞かない。

2

事実は外に置く

締切以降の情報・数値・実在確認は検索やツールで。AIの記憶を信じない。

3

決まった作業はスクリプト・Hooks に

決定論に任せる。LLM に電卓の真似をさせない。

図10確率で動くAIとの3つの約束
検証は別のチャットで・事実は外に置く・決まった作業はスクリプトとHooksに、という3つの約束を並べた図解

図: 3つの約束。検証は別のチャットで、事実は外に置く、決まった作業は決定論に任せる。

DEMO3実演

園長がライブでやる3つ

実演メニュー

今夜の実演は3つ。全部、家でも同じ手順で再現できます。コピペ原文は各章のブロックA・B・Cにあります。

実演① 同じ質問を3回

手順

  1. 新規チャットを開く
  2. ブロックAを貼る
  3. 答えが出たら、また新規チャットで同じものを貼る。計3回
ブロックAへ

見るポイント

  • 文面の違い: 同じ質問なのに、言い回しが毎回変わる
  • 内容の共通点: 意味は近い。確率で選ぶから「近いけど同じではない」
HOMEWORK3宿題

今夜やる・30分以内

宿題

今夜のうちにやると、性質が体に入ります。Claude Code を使っていない人も、ChatGPT / Claude.ai で全部できます。

同じ質問を新規チャットで3回投げて、違いをスクショして Discord に貼る

ブロックAをそのまま使ってOK。3枚並べると、非決定論が一目でわかります。

体感するもの: 非決定論

自分の CLAUDE.md のルールを数えて、半分に減らす

Claude Code 未使用なら、ChatGPT / Claude のカスタム指示で同じことを。「必要なときだけ」に残せるか。

体感するもの: 注意力有限

何かの文章を採点させてから、新規チャットで採点し直す。点数の差を見る

ブロックBの手順どおり。差が出たら、それが「ほめ上手」の正体です。

体感するもの: 迎合性
FINAL3結論

持ち帰る3行

結論

中身を知ると、選び方が変わる。

  1. AIは考えて答えているのではなく、次の言葉を確率で選んでいる。だから毎回違うし、それっぽい嘘も言う。
  2. 困りごと(締切・机・注意力・長さ・迎合)はモデルの性質。ハーネスはその対策。CLAUDE.md・スキル・Hooks・サブエージェント・第三者評価は全部ここから出てくる。
  3. 選び方は「エンジン(モデル)× アクセル(エフォート)× 電卓(ツール)」。解決1件あたりのコストで決める。

AIは確率で動く。だから補助輪をつける。

エンジンを積んだ車で走り出す柴犬と猫のイラスト
エンジン(モデル)を車(ハーネス)に載せて、走り出す。今夜の話はここまで。あとは Q&A と宿題です。
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出典

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  1. note園長 note「AIは『思考』していない。確率で『次の言葉』をつなげているだけ。」2026年2月21日
  2. 勉強会ウラチカ勉強会㉑「プロンプトを打つ時代から、ループを回す時代へ」2026年7月14日
  3. 公式Anthropic 公式ドキュメント(モデル・価格・effort)2026年6月時点
  4. 用語「確率的オウム(Stochastic Parrots)」— 2021年にAI倫理の研究者が用いた表現(用語の出典として)